記録的な雨量となった18日からの豪雨に伴う村山地方の断水は、天童市で最長8日間に及ぶなど、県民生活や企業活動に支障を来した。多くの県内自治体が広域水道に依存する中、県には早急に改善策を見いだすことが求められる。課題を探った。(報道部・黒沢光高) 断水の長期化は、村山広域水道への高い依存率が影響した。県企業局によると、同広域水道から供給を受ける12市町のうち断水が発生した6市町は、5市町までが依存率85%以上。これに対し、断水のなかった山形市は22.2%、西川町は18%と低かった。 ほかの広域水道はどうか。高い依存率は庄内、最上、置賜でも見られる。 置賜広域水道は川西町が100%、南陽市が99.1%、米沢市が84%、高畠町が68.9%。最上広域水道は金山町が100%、新庄市が98.4%、真室川町が53.3%。庄内広域水道は庄内町が87.1%、鶴岡市・三川町が86.8%、酒田市が45.2%と、8割を超す自治体が多い。地区全体の依存率は村山の46.3%に対し、置賜64.1%、最上55.8%、庄内67.5%と、いずれの地域とも村山を上回る。 ■多額の維持費 浄水施設の濁度を下げる処理能力は最上のみ村山を上回るが、置賜と庄内は村山とほぼ同水準となっている。ただ、取水が河川の水を取り込む村山に対し、雨による濁度上昇の影響を河川より受けにくいダムの水を直接取り入る方式をとっていたり、河川取水でもダムからの距離が短く支川の影響を受けにくい状況にある。村山以外での大雨による断水発生の可能性について同局は「ゼロではない」と説明する。 広域水道への依存率の高まりの背景には、自治体が自前の設備の維持と更新に多額の費用がかかるという理由もあった。1970~80年代、国の補助が増額の一途をたどる中、全国各地で広域水道化が加速。市や町は順次、効率的な広域水道へ移行した。市町の負担軽減に成果を発揮する一方、自治体は自前の浄水場を閉じていった。 ■負担増の懸念 「市町が新たに自前の水源を確保するのも対策の一つ」との指摘もある。しかし、吉村知事は「膨大な費用を要する。現実的でない」との認識を示す。村山広域水道の設置事業費は679億円、庄内広域水道は699億円、置賜広域水道は354億円。市町村が今後、巨費を投じて自前の水源を確保したとしても、維持管理費でさらに負担が増え、最終的には住民の水道料金にはね返ることが懸念される。 県は近く、原因究明や今後の対応策などを協議する検討委員会を設置する。吉村知事は「浄水場の処理能力を高めるなど、現状の課題克服の方が現実的。高い濁度の原水が長時間発生しても受水団体や県民に迷惑がかからないようにする」と話す。台風シーズンを目前に控える中、県には、速やかに対策を講じることはもちろん、負担増などによる県民生活への影響を最小限にとどめる努力も必要になる。
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