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11月初め、中国河北省南部の貧しい山村を約1年ぶりに訪ねた。2008年に日中関係を大きく揺るがした中国製ギョーザ中毒事件で逮捕された食品工場の元従業員、呂月庭容疑者の実家がある。ギョーザに毒を混入したとして10年4月に逮捕されたが、裁判が開かれたという情報はない。「証拠不十分のため裁判にならない」「反日感情が高まっている今は裁けない」「すでに釈放された」などの噂が流れている。
村の一番奥に住む呂容疑者の68歳の父親は屋根の上で柿を並べて干していたが、急いで下りてきて転びそうになった。「私の子供の消息を何か知っているのか」と聞いてきた。当局から何の連絡も受けたことはないという。
老人は字が読めず、その妻は耳が不自由だ。非力な老夫婦はこの3年間で一度だけ、町役場に勤める遠縁の親類を通じて当局に息子について尋ねたが、「そんなことは知らない」といわれたという。「悪いことをしたなら罪を償ってもらいたいが、何か起きたのか知りたい」。老人は呂容疑者の写真を眺め、目に涙を浮かべた。
犯罪容疑者の家族の境遇に同情すべきかは別として、少なくとも中国当局が「人権状況は大きく改善された」(人権白書)と宣言するのは時期尚早だと思った。(矢板明夫)